きな山がかさなつてゐる、私の好きな友だちといつしよである、酒はひきぬき、風はすゞしい、あゝ極楽、極楽。……
[#ここから1字下げ]
今日の行程八里。
今日の所得銭五十七銭、米三升六合。
[#ここから2字下げ]
・近道の近道があるをみなへし
・こゝから下りとなる石仏
・山の朝風の木が折れてゐる
・ほんにうまい水がある注連張つてある
・どうやら道をまちがへたらしい牛の糞
・住めば住まれる筧の水はあふれる
近道近かつた石地蔵尊
うらは蓮田で若いめをとで
・はだかではだかの子にたたかれてゐる
・波音のガソリンタンクの夕日
・一切れ一銭といふ水瓜したたる
[#ここで字下げ終わり]
八月十日[#「八月十日」に二重傍線]
朝の山を眺めながら朝酒を味はつた、樹明君は夜明けに起きるなり自転車を飛ばせていつた。
七時すぎてから地下足袋を穿く、ほろ酔のうれしさである。
峠は近道(いひかへれば旧道)を歩いた、道連れとして面白い人物が待つてゐた、彼は酒好きの左官、女房に死なれて焼糞になつてゐるが、近く後妻を貰ふつもり、どうでせうかと訊く、是非お貰ひなさい、それが最も賢明な策ですと勧説して別れた。
三隅
前へ
次へ
全19ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング