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・深夜の鏡にふか/″\と映つてゐる顔
あれは青柿が落ちた夜の音
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八月二十一日[#「八月二十一日」に二重傍線]
草取、身辺整理。
藪蚊と油虫とが癪に障る。
早く晩飯をすまして、蚊帳の中で読書をしてゐるところへ樹明君が来て、井手逸郎さんの到着を知らしてくれる、私は駅前の宿屋まで出迎にいつたが、かけちがつて、逸郎さんはひとりでもう庵にきてゐられた。
酒も下物もすべてを樹明君が負担してくれた、いつもすまないと思ふが、さう思ふだけでどうにもならない。
三人で夜のふけるのも忘れて話しあつた、愉快な一夜だつた、送つて街へ出かける、まるし食堂でビールを飲んで別れる。
樹明君はいつしよに戻つて泊つた。
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・朝焼うつくしいとかげの木のぼり
・泣く子泣かしておく青田風
述懐一句
がちや/\がちや/\生き残つてゐる
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八月廿二日[#「八月廿二日」に二重傍線]
晴、宿酔気分、焼酎一杯。
逸郎さんから見事な葡萄を一籠貰つたので、冬村君、呂竹さんへお裾分する。
△私の貧乏はよい貧乏[#「私の貧乏はよい貧乏
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