ら、いつ寝たやら、一切合切不明なり、しかも些の不都合なし、善哉々々。
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今日の所得(銭七十九銭、米二升一合)
今日の買物 一、五銭 キセル
一、三銭 シヤモジ
一、四銭 ハシ
一、弐十四銭 サケ
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八月十三日[#「八月十三日」に二重傍線]
からりと晴れてゐる、身心もさつぱりしてゐる、今日は昨日の分まで行乞しなければならない。
午前中深川町行乞、巡査がきていろんな事をたづねる、要領よく応対。
湯本へ出て、安宿で昼寝、それから湯町を行乞してゐるとまた巡査がやつてきた、何のかのとうるさい、近く澄宮殿下が萩市に行啓なさるので、彼等は神経過敏になつてゐるらしい、あんまりうるさいから峠を越えて於福まで歩き、朝日屋といふのへ泊つた、母子二人のしめやかさ、なか/\よい宿だつた、木賃二十五銭は安すぎる、気の毒な事には娘さんが病んでゐる、肺結核らしい、とても助かるまい。
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今日の行程は四里。
所得は銭八十一銭、米一升七合。
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八月十四日[#「八月十四日」に二重傍線]
山村の朝は何ともいへないすが/\しさだ。
今日は樹明居徃訪を約してゐる、樹明君も待つてくれてゐるだらうか、同行の敬治君も待ちあぐんでゐるだらう。
急テンポで於福行乞、途中また堅田行乞、急いで帰庵したが、五時を過ぎてゐた、置手紙二つ、一つは樹明君が待つてゐるといふ、他は敬治君が待ちあぐねたといふ。
おそかつた、すまなかつた、くたびれた、がつかりした。……
昼食として桃を食べた、おいしかつた、気附薬として焼酎半杯、これはむろんうまい。
× × ×
行乞七日間、懸命に稼いで(私のやうな行乞はまつたく筋肉労働である)残つたものは、銭が壱円四十銭あまり、米が三升ばかりだつた。
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今日の所得(銭四十七銭、米一升六合)
行程八里。
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八月十四日[#「八月十四日」に二重傍線]
於福から八里歩いて戻つて、戻るなり樹明居へ押しかけて、お盆のお経をあげてお盆の御馳走になつた、たいへん酔うた、道がわからなくて樹明君に途中まで送つて貰つた。……
樹明君ありがたう、敬治君すみませんでした、二時間も待たせて、そしてとう
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