わたればふるさとの街で
・おばあさんはひとりものでつんばくろ四羽
・つゆのつゆくさのはなひらく
・水音のよいここでけふは早泊り
炎天、蟻が大きな獲物をはこぶ
・炎天の鴉の啼きさわぐなり
石にとまつて蝉よ鳴くか
・山の青さへつくりざかやの店が閉めてある
・そこから青田のほんによい湯加減
・おそい飯たべてゐる夕月が出た
・暮れてまだ働らいてゐる夕月
ぐつすり寝て覚めて青い山
よい寝覚のよい水音
炎天のした蚯蚓はのたうちまはるばかり
・ことわられたが青楓の大きな日かげ
・けふはプラタナスの広い葉かげで昼寝
岩水に口づけて腹いつぱいのすずしさ
・ふるさとのながれにそうて去るや炎天
・逢ひたいが逢へない伯母の家が青葉がくれ
・ふるさとは暑苦しい墓だけは残つてゐる
・ふるさとや尾花いちめんそよいではゐれど
笹にもたれて河原朝顔の咲いてゆらいで
・はるかに夕立雲がふるさとの空
[#ここで字下げ終わり]
七月三十日[#「七月三十日」に二重傍線]
よくねむれた、つばめが朝早くから子に餌をもつてきてやつてゐる、これはおばあさんの孫みたいなものだらう。
堀行乞、七時から九時まで、そして島
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