まつた炎天
あるけばこゝろなぐさむやいぬころ草
・石に腰かけあほぐや青葉
・山の青さ湯のわく町で泊らうとする
・月かげながうひいて戻つてきた
・月の障子のあかるさで寝る
このままでかへるほかない草螢
草の花ほんに月がよか 緑平
ほんによか昭和八年七月九日 山頭火
[#ここで字下げ終わり]
七月十日[#「七月十日」に二重傍線]
快晴、朝の冷やかさは新秋のやうだつた、日中はまさに真夏。
今日は朝、昼、晩の三度とももぎたて[#「もぎたて」に傍点]の茄子を食べた、うまい/\。
昼寝は長すぎたが、連日のつかれをすつかり解消した。
午後、街へ出かけた、焼杉下駄を買ふ、二十一銭、これで二ヶ月は大丈夫だ、冬村君の仕事場へ寄る、弟さんだけしかゐない、蝮蛇疵は大したことがないとのこと、それは結構、安心する、さらに樹明君を学校に訪ねる、元気いつぱい、うれしいことだ。
幸福な夕――昨日のおかげで、酒はあるし、下物もあるし、身心は安らかだし。――
ふと眼がさめたら、月が寝床をのぞいてゐた、よくねむつ一[#「つ一」に「マヽ」の注記]夜。
[#ここから2字下げ]
ばつたり風がなくなつて蝉の声
すこし風が出てきて青蛙なく
・あんなところに網を張り蜘蛛のやすけさは
・あすは雨らしい空をいたゞく
[#ここで字下げ終わり]
底本:「山頭火全集 第五巻」春陽堂書店
1986(昭和61)年11月30日第1刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:小林繁雄
校正:仙酔ゑびす
2009年1月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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