しさであつた。
折角、来庵してくれたのに、何のお愛想もできない、たゞ雑草風景[#「雑草風景」に傍点]を鑑賞してもらつた、雑草の自由美[#「雑草の自由美」に傍点]は庵の特色でもあり自慢でもある。
緑白二老は一時の汽車で、黎々火君は四時の汽車で、そして樹明君は学校へ、――みんながそれ/″\の家庭へ帰つていつた、私はとてもやりきれないので、萩地方行乞の旅へと山口まで出かけたが、宿の都合がわるくて(湯田で三軒、山口で三軒断られた)、ムシヤクシヤしたので、温泉に浸つて、水を飲んで、※[#「飮のへん+稻のつくり」、第4水準2−92−68]パンをかぢりながら帰庵した、まことに遠い散歩[#「遠い散歩」に傍点]ではあつたが、月の一すぢみちはまことによかつた。
[#ここから2字下げ]
・朝ははだしで、何やら咲いてゐる
・梅雨空うなる機械へ人間があつまつてくる
朝空の夾竹桃は赤いかな
・土運ぶ手が本をひろげて昼やすみ
・ここにも夏花の赤さはある
・螢もいつぴき
水音の三人の朝である
□
・わかれたままの草鞋をはく
・わかれてきた道がまつすぐ
・さびしさはここまできてもきりぎりす
・みんないんでし
前へ
次へ
全32ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング