は腰が痛くて来られないさうで、原稿紙をくれといふ使が来た、胡瓜苗も送つてくれた。

 六月十四日[#「六月十四日」に二重傍線]

晴れたり曇つたり、私はゆつくり昼寝した。

 六月十五日[#「六月十五日」に二重傍線]

晴、草取デー。
樹明来、酒と肴とをおごつてくれた。
ほとんど徹夜して身辺を整理した、気分がさつぱりした。
[#ここから2字下げ]
・たれかこいこい螢がとびます
 さら/\青葉の明けてゆく風
・風は夜明けのランプまたたく
・こゝろすなほに御飯がふいた
 埃まみれで芽ぶく色ともなつてゐる(改作)
[#ここで字下げ終わり]

 六月十六日[#「六月十六日」に二重傍線]

昨夜の酒がこたえて胃が悪い。
行乞をやめて野菜の手入をする、樹明君が持つてきてくれた菊を※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]したり、胡瓜の棚を拵らへたり。
[#ここから2字下げ]
・から梅雨の蟻の行列どこまでつづく
・朝風、胡瓜がしつかりつかんでゐる
 番茶濃きにもおばあさんのおもかげ
・柿の花のぽとりとひとりで
・てふてふうらからおもてへひらひら
 街が灯つた青葉を通して
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