伝統的のゆかしさがないことはない。
△畦の草をしいて食べる田植辨当はうまからう、私もその割子飯[#「割子飯」に傍点]の御馳走になりたいな、土落し[#「土落し」に傍点]によんでくれるうちはないかな。
椹野川の瀬音、土手のさくらんぼ。
夕凪の浅瀬を泳ぐのは鮎か鮠か、負うた子にとつてやる月草のやさしい心。
十一時から二時まで行乞、行乞相はわるくなかつた。
戻つたのが五時過ぎ。――
[#ここから3字下げ]
暑くるしい塵がたまつて出たときのまま
[#ここで字下げ終わり]
だつた、破れた人生の、捨てられた姿だ。
飯は貰うて食べる、煙草は拾うて吸ふ、生きてゐるのでなくて生かされてゐるのである。
△自然的には生かされてゐる人間であるが、社会的には生きてゐなければならない、虫に生存[#「生存」に傍点]があつて人間に生活[#「生活」に傍点]がある所以だ。
△風の如く来り風の如く去る、水の如く雲の如く。
[#ここから2字下げ]
今日の行乞所得
米 一升四合 銭 弐十七銭
今日の買物
一金四銭 たばこ 一金四銭 古雑誌
一金三銭 はがき 一金五銭 しようゆ
一金十銭 しようちゆう
[
前へ
次へ
全16ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング