に傍点]。
樹明来、よい酒をのんでよい酔をえた。
昨日は新国道のよさを痛感した、――大道坦として砥の如し、――今日は石ころ道のみじめさ、――どこまで行く石ころみち。――
△この窮乏、そしてこの自由、食ふや食はずの私であるが、私は行きたいときに行きたいところへ行く、天は二物を与へないといふ、まつたくその通り。
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電線といつしよに夏山越えて来た
・朝から水をのむほがらかな空
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六月一日[#「六月一日」に二重傍線]
酔中夢なし、ほつかり覚めて、飯を炊く、そして酒を飲む。
今日一日のさびしさは飯の生煮であつた。
冬村居から青紫蘇の苗を貰うて来て植ゑる。
柿の花はおもしろいかな。
待つてゐる――敬坊来、間もなく樹明来、かしわで飲む、何といふうまさ、友情そのものの味はひだ!
敬坊の奥さんが子供をみんな連れてやつて来られた、敬坊に信用なし、奥さんに理解なし、女といふものは、妻といふものは。――
敬坊おとなしく、奥さんうれしく、樹明つゝましく、帰つてゆく、私はぽかんとしてあるだけの酒を飲む、……よかつた、よかつた、よかつた、よかつた。
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