かつた。
腹工合が悪いので、行乞は止めにして、洗濯したり畑仕事をしたり、読書したり執筆したりして暮らした。
蕗の佃煮をこしらへる、私の好物である。
裏畑の麦を刈る音、梅をもぐ声、のどかである。
たしかにほとゝぎすが啼いた、若い調子で。
机の場所を変へる、もう蚊帳を吊らなければならなくなつたから、書斉[#「斉」に「マヽ」の注記]を表の四畳半から後の三畳へ移したのである。
アルコールなしの門外不出が三日つゞいた、努めてさうしたのではないが、しようことなしに、いや、おのづからさうなつたのだ。
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窓へのぞいて柿の若葉よ
播いてゐるときほとゝぎす
・ほとゝぎすがなけば鴉も若葉のくもり
身のまはりかたづけてさみしいやうな
仲よく空から梅をもいでは食べ
・伸びぬいて筍の青空
・あてなくあるくや蛇のぬけがら
[#ここで字下げ終わり]
どうしても寝つかれないで、とう/\徹夜してしまつた。
井生君から貰つてきた改造と中央公論とを読んで、いろ/\の事を考へないではゐられなかつた、殊にその一つのもの[#「その一つのもの」に傍点]と転換時代[#「転換時代」に傍点]とはその熱力と意気
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