分で飲んだ、その酒の苦さ、そしてその酔の下らなさ。
小郡から電話がかゝる、Jさんから、Kさんから、――来る、来るといつて来なかつた。
また飲む、かういふ酒しか飲めないとは悲しい宿命[#「悲しい宿命」に傍点]である。
[#ここから2字下げ]
・あてもない空からころげてきた木の実
[#ここで字下げ終わり]
此句には多少の自信がある、それは断じて自惚ぢやない、あてもない[#「あてもない」に傍線]に難がないことはあるまいけれど(あてもない[#「あてもない」に傍線]は何処まで行く、何処へ行かう、何処へも行けないのに行かなければならない、といつたやうな複雑な意味を含んでゐるのである)。

 八月十八日

近来にない動揺であり、そしてそれだけ深い反省だつた、生死、生死、生死、生死と転々した。
アルコールよりカルモチンへ、どうやらかういふやうに転向しつゝあるやうである、気分の上でなしに、肉体に於て。
待つ物来らず、ほんとうに緑平老に対してすまない、誰に対してもすまない。

 八月十九日

何事も因縁時節、いら/\せずに、ぢつとして待つてをれ、さうするより外ない私ではないか。
入浴、剃髪、しんみりとした
前へ 次へ
全131ページ中86ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング