ようともしない
[#ここで字下げ終わり]

 七月廿七日

今日は土曜[#「曜」に「マヽ」の注記]の丑の日。
鰻どころか、一句もない一日だつた!
だが、夕方になつて隣室から客人から、蒲焼一片を頂戴した。
まことに鰻ひときれの丑の日だつた!
[#ここから2字下げ]
・暑さ、泣く子供泣くだけ泣かせて
[#ここで字下げ終わり]
だから、駄句一つの一日でもあつた!

 七月廿八日

晴、風がすが/\しい、そして何となく雨の近い感じがする、今日はきつとよいたよりがあるだらう。
よいたよりといへば、昨日うけとつたたよりはうれしいものであつた、緑平老からのたよりもうれしかつたが、幸雄さんからのそれは殊にうれしかつた、それは温情と好意とにあふれてゐた。
頭痛がする、頑健そのものゝやうな私も暑さと貧しさとでだいぶ弱つたらしい、だがまゐつたのぢやない。
野百合と野撫子とを活けた、百合はうつくしい、撫子は村娘野嬢のやうな風情でなくて(百合のやうに)深山少女といつた情趣である、好きな花だ、一目何でもないけれど、見てゐるとたまらなくよいところがある、西洋撫子はとても/\だ。
正さん――この宿の次男で、私の新らし
前へ 次へ
全131ページ中68ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング