をまともに眺められるところに庵居したいものだ。
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・鉄鉢かゞやく
・着飾らせて見せてまはつてゐる
・水音、なやましい女がをります
・暗さ匂へば螢
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夜、浴場で下駄をとりかへられた、どちらも焼杉(客用)だつたが、私の方がよかつた、宿に対して気の毒なので、穿き減らされた下駄の焼印を辿つて、その宿屋へ行つてとりかへしてきた、ちと足元に気をつけなさいと皮肉一口投げつけてをいて、――まことに脚下照顧[#「脚下照顧」に傍点]はむつかしい(此句は足元御用心とでも訳すべきだらう)。
今夜もまた睡れさうにないから、寝酒を二三杯ひつかけたが、にがい酒だつた、今夜の私[#「今夜の私」に傍点]としては。――
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アルコールよりカルモチン
   ちよつと一服|盛《モ》りましよか
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 六月四日 同前。

曇后晴、読んだり歩いたり考へたり、そして飲んだり食べたり寝たり、おなじやうな日がつゞくことである。
午後、小串まで出かける、新聞、夏帽、シヨウガ、壺を買ふ、此代金五十一銭也。
帰途、八幡の木村さんから紹介されて、森野老人を
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