る日の行乞途上の偶感である。
君は不生産的[#「不生産的」に傍点]だからいけないと、或る人が非難したのに対して、俺は創造的[#「創造的」に傍点]だよと威張つてやつた。
けふもサケナシデーだつた、いやナツシングデーだつた、時々、ちよいと一杯やりたいなあと思つた、私は凡夫、しかも下下の下だ、胸中未穏在、それは仕方がない、酒になれ、酒になれ通身アルコールとなりきれば、それはそれでまたよろしいのだが、そこまでは達しえない、咄、撞酒糟漢め。
夕方また歩いた、たゞ歩いた。
自から嘲る気分から、自からあはれみ自からいたはる気分へうつりつゝある私となつた、さて、この次はどんな私になるだらうか。
いつからとなく私は『拾ふこと』を初めた、そしてまた、いつからとなく石を愛するやうになつた、今日も石を拾うて来た、一日一石[#「一日一石」に傍点]としたら面白いね。
拾う――といつても遺失物を拾ふといふのではない(東京には地見[#「地見」に傍点]といふ職業もあるさうだが)、私が拾ふのは、落ちたるもの[#「落ちたるもの」に傍点]でなくして、捨てられたもの[#「捨てられたもの」に傍点]、見向かれないもの[#「見向かれ
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