知れない、此地方のやうな山村山田では水がなくて困るかも知れないな、どうぞさういふ事のないやうに。――
歯が悪くなつて、かへつて、物を噛みしめて食べるやうになつた(しようことなしに)、何が仕合になるか解つたものぢやない。
此宿の裏長屋に、仔猫が四匹生れてゐる、みんな可愛い姿態を恵まれてゐる、毎日、此宿の孫息子にいぢめられてゐるが、親猫は心配さうに鳴いてゐるより外ない、その仔猫を夕方、舞妓が数人連れて貰ひに来た、悪口いつては気の毒だが、仔猫仔猫を貰ひに来た、ソモサン!
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・からつゆから/\尾のないとかげで
いつしよにびつしより汗かいて牛が人が
・ゆふぐれは子供だらけの青葉
仔猫みんな貰はれていつた梅雨空
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また文なしになつた、宿料はマイナスですむが、酒代が困る、やうやくシヨウチユウ一杯ひつかけてごまかす。
やつぱり生きてゐることはうるさいなあ[#「やつぱり生きてゐることはうるさいなあ」に傍点]、と同時に、死ぬることはおそろしいなあ[#「死ぬることはおそろしいなあ」に傍点]、あゝ、あゝ。
六月十二日 同前。
曇、今日から入梅。
山を歩い
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