てあつた(私はいつもそんなものは無視して行乞するが)。
口で嘘をいふのは造作ないが、からだがホントウをいふ、いひかへれば、言葉よりも動作にヨリ真実的なものがある。
こゝはおもしろいところだ、妙青寺山門下の宿で、ドンチヤン騒ぎをやつてゐる、そしてしづかだ!
私は一人で墓地を歩くのが好きだ、今日もその通りだつた、いゝ墓があるね、ほどよく苔むしてほどよく傾いて。――
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・墓まで蔓草の伸んできた
    □
 水にはさまれて青草
・山畑かんらんやたらひろがる
・松かげ松かぜ寝ころんだ
・茅花穂に出てひかる
・山ゆけば水の水すまし
    □
・地べた歩きたがる子を歩かせる
    □
 さみしうて夜のハガキかく
[#ここで字下げ終わり]
川棚温泉の缺点は、風がひどいのと、よい水[#「よい水」に傍点]のないことだ、よい水を腹いつぱい飲みたいなあ!
大根一本一銭、キヤベツ一玉四銭だつた。
教育のない父が、貧乏な父が、とかく子にむつかしい、嫌味たつぷりの名をつける、気をつけて御覧、まつたくさうだから。
緑平老から、いつもかはらぬあたゝかいたよりがあつた、層雲六月号、そこには私の
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