て彼等の会話、――冷たいわねえ、いゝ時候ですわね――モチ、私の白日夢[#「白日夢」に傍点]の一片である、ハ、ハ、ハ。――
午後はまた魚釣に出かけた、一時間ほど、今日の獲物は本当の雑魚七尾(其内訳は鮠二、ドンコ二、ニゴヅ三、そしてドンコの一は川で洗ふ時ツルリと逃げた、何といふ幸運なドンコだつたらう)それをコリ/\焼(これは私だけの術語で、小魚を丹念に遠火で焼き、噛めばコリ/\音がするまで焼きあげるのである、ちつとも腥くない、それだけ味は劣るが)にして焼酎を一杯やつた、うまかつた、所謂、ほろ/\とろ/\の境[#「ほろ/\とろ/\の境」に傍点]である。
食後、夕べの散歩がてら樹明居へ推参、案の如く不在、一時間ばかり待つたが、待ちきれないで帰る、途中ヒヨツコリ樹明さんと逢ふ、樹明さんは私の所で私を待つてゐて、待ちきれないで帰つて来たのだといふ、二人が別々に二人を待つてゐたのだつた、これも人生の一興たるを失はない。
初めて樹明さんの労働姿を見た、初めて樹明さんの父君と話した、此父にして此子あり、此子にして此父あり、すつかり信服した、大人の風格[#「大人の風格」に傍点]があるとでもいはうか。
樹明
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