行乞、滞在、叶屋。
今日はよく行乞した、こんなに辛抱強く家から家へと歩きまはつたことは近来めづらしい、お天気がよいと、身心もよいし、行乞相もよい、もつとも、あまりよすぎてもいけないが。
行乞中、毎日、いやな事が二三ある、同時にうれしい事も二三ある、さしひきゼロになる、けふもさうだつた。
花が咲いて留守が多い、牛が牛市へ曳かれてゆく、老人が若者に手をひかれて出歩く、子供は無論飛びまはつてゐる。
花、花、花だ、満目の花だ、歩々みな花だ、『見るところ花にあらざるはなし』『触目皆花』である、南国の春では、千紫万紅[#「千紫万紅」に傍点]といふ漢語が、形容詞ではなくて実感だ。
風呂へいつたついでに駅へ立ち寄つたら、凱旋兵歓迎で人がいつぱいだ、わづか一兵卒(といつては失礼だけれど)を迎へるのに一村総出で来てゐる(佐賀市で出征兵士見送の時もさうだつた)、これだけの銃後の力があつて日本兵が強くなければ嘘だと思つた。
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・蕨がもう売られてゐる
鳩も雀も燕までをりていたゞいてゐる
夫婦仲よく鉄うつやとんかん(鍛冶屋)
・春風のボールにうたれた(行乞途上)
乞食となつて花ざかり
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