ある、清潔とか何とかは第二第三の要件である、此宿のおかみさん抜目がなさすぎる、いたづらにきれい好きで、そしてふしんせつだ。
街上所見の一――これはまた、うどんやが硝子戸をはめてカフヱー日輪となつてゐる、立看板に美々しく『スマートな女給、モダーンな設備、サーピ[#「ピ」に「マヽ」の注記]ス(セーピスぢやない)百パーセント』さぞ/\非スマートな姐さんが非モダーな[#「ーな」に「マヽ」の注記]チヤブ台の間をよた/\することだらう(カフヱー全盛時代には山奥や浦辺にもカフヱーと名だけつけたものがうよ/\してゐた、駄菓子が[#「子が」に「マヽ」の注記]カフヱーベニスだつたりした、もつともそこは入川に臨んでゐたから、万更縁がないでもなかつたが)。
もう蕨を触れ歩く声が聞える、季節のうつりかはりの早いのには今更のやうに驚かされる。
同宿五人、私はひとり[#「ひとり」に傍点]を守つて勉強した。
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・山から自転車でさくら売つてきた
 いつ咲いたさくらまで登つてゐる
 腹底のしく/\いたむ大声で歩く
[#ここで字下げ終わり]

 四月九日[#「四月九日」に二重傍線] 申分のない晴、町内
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