が飛びだして、行乞即時停止を命じた、妙な男があるものだわいと感心してゐるうちにドシヤ降りになつた、行乞は否応なしに中止、合羽を着て仁井山観音参拝、晴間々々を二時間ばかり行乞、或る家で、奥様が断つて旦那はお茶をあがれといふ、ずゐぶん妙だ、それからまた歩いていると呼びとめられる、おかみさんが善根宿をあげませうといふ、此場合、頂戴するのがホントウだけれど、ウソをいつて体よく断る。……
久しぶりに山村情調を味はつた、仁井山(第二十番札所地蔵院)はよいところ、といふよりも好きなところだつた、山が山にすりよつて水がさう/\と流れてくる、山にも水にも何の奇もなくて、しかもひきつけるものがある、かういふところではおちつける、地蔵院の坊守さんがつゝましくお茶をよんで下さつた、しづかでいゝところですね、と挨拶したら、しづかすぎまして、と微笑した。
同宿三人、みんな好人物、遠慮のない世間話で思はず夜がふけた。
此宿のおかみさんはもう三年越しの起居不自由だ、老主人が何もかもやつてゐる、それを見るともなく見て、つく/″\女は我まゝだなあと恐れ入らざるをえなかつた。
彼はいつも、食べることばかりいふ、彼をあはれむ
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