えて鼠も行つたり来たりする
    □
 水鳥の一羽となつて去る
 飾窓の牛肉とシクラメンと
[#ここで字下げ終わり]

 三月六日[#「三月六日」に二重傍線] 曇后雨、あとは昨日の通り。

行乞して、たま/\出征兵士を乗せた汽車が通過するのに行き合せた、私も日本人の一人として、人々と共に真実こめて見送つた、旗がうごく、万歳々々々々の声――私は覚えず涙にむせんだ、私にもまだ/\涙があるのだ!
同宿の猿まはし君は愉快な男だ、老いた方は酒好きの、剽軽な苦労人だ、若い方は短気で几帳面で、唄好だ、長州人の、そして水平社的な性質の持主である、後者は昨夜も隣室の夫婦を奴[#「奴」に「マヽ」の注記]鳴りつけてゐた、おぢいさんがおばあさんの蒲団をあげたのがいけないといふのだ、そして今夜はたまたま同宿の若いルンペンをいろ/\世話して、鬚を剃つてやつたり、或る世間師に紹介したりしてやつてゐる。
みんな早くから寝た、寝るより外ないから――鳴りだした、お隣のラヂオが、そして向ひの蓄音機が、そしてみんなそれに聴き入つた、浪花節、流行歌、等、々、――私はだん/\センチになつた、いつぞや緑平老の奥さんにそれを聴かし
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