可もなし。
物にこだはるなかれ、無所得、無所有、飲まないで酔ふやうになれ。
三月二日[#「三月二日」に二重傍線] 晴、曇、どうやら春ですね、行程二里、行乞六時間、久保田、まるいちや(三〇・中)
行乞相が日にましよくなるやうだ、主観的には然りといひきる、第三者に対しては知らない。
此地方で――どこでも――多いのは焼芋屋、そして鍼灸治療院。
いはゆる勝烏――天然保護物――が啼き飛ぶ、そこで一句。――
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頭上に啼きさわぐ鳥は勝烏《かちがらす》
・枯草につゝましくけふのおべんたう(追加)
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今日は妙な事があつた、――或る家の前に立つと、奥から老妻君が出て来て、鉄鉢の中へ五十銭銀貨を二つ入れて、そしてまた奥へ去つてしまつた、極めて無造作に、――私は、行乞坊主としての私はハツとした、何か特殊な事情があると察したので懇ろに回向したが、後で考へて見ると、或は一銭銅貨と間違へたのではないかとも思ふ、若しさうであつたならば実に済まない事だつた、といつて今更引き返して事実を確めるのも変だ――行乞中、五十銭玉一つを頂戴することは時々ある、しかしそれが一つで
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