きの思出もあるので。
此宿は宿としてはよい方ではないけれど、山家らしくて、しつとりと落ちついてゐられるのが好きである。
今日の道はよかつた、いや、うつくしかつた、げんげ、たんぽゝ、きんぽうげ、赤いの白いの黄ろいの、百花咲きみだれて、花園を逍遙するやうな気分だつた、山もよく水もよかつた、めつたにない好日だつた(それもこれもみんな緑平老のおかげだ)、朝靄がはれてゆくといつしよに歯のいたみもとれてきた。
麦の穂、苗代つくり、藤の花、鮮人の白衣。
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 雀よ雀よ御主人のおかへりだ(緑平老に)
 香春をまともに別れていそぐ
 別れてきた荷物の重いこと
 別れてきて橋を渡るのである
 靄がふかい別れであつた
 ひとりとなつてトンネルをぬける
 なつかしい頭が禿げてゐた(緑平老に)
・塵いつぱいの塵をこぼしつゝゆく
 石をきざみ草萠ゆる
 若葉清水に柄杓そへてある
・住みなれて筧あふれる
・あるけばきんぽうげすわればきんぽうげ
    □
・衣がへ、虱もいつしよに捨てる
    □
 山寺ふけてゆつくり尿する(改作・福泉寺)
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此宿の田舎らしいところはほん
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