ねる、酒、それから同行して小城さんの新居へ、また酒、そしてまた四有三居で酒、酒、酒。
木村さんに連れられて、やつと宿を見つけて泊る、ぐつすり寝た、二夜分の睡眠だ。
四有三さんに――(廿三日、小倉から)。
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昨日はまるで酔ひどれの下らなさ図々しさを見せるためにお訪ねた[#「ねた」に「マヽ」の注記]やうなものでしたね、寄せ書きした頃から何が何だか解らなくなりましたよ、でも梅若葉のあざやかさ、おひたしのおいしさは、はつきり覚えてゐるから不思議です。……
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入雲洞さんから、敷島の百本入を一函頂戴した(双之介君からウエストミンスター、酒壺洞君からチエスターフイールドを貰つたのと共に漫談のいゝ材料だ)。
洞海(ドウカイ)或は洞の海(ホラノウミ)はいゝ、此の海を中心として各市が合併して大都市を形成する計画があるさうだが、それはホントウのスバラシイ事業だ。
美しい女が美しい花を持つてゐた。
子供の遊び、今日此頃は軍隊ごつこ戦争ごつこだ、子供は正直で露骨、彼等は端的に時代の風潮を反映する、大日本主義!
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 朝曇りのボロ船が動かない
 汐風を運ばれる鰒がふくれてゐる
 きたない水がぬくうて葦の芽
・鉄板をたゝいても唄うたつてゐる
 警察署の無花果の芽
・帆柱ばつかりさうして煙突ばつかり(若松から八幡へ)
 竹藪あかるう子供もできた(小城氏新居)
 あかるく竹がそよいでゐる
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 四月廿三日[#「四月廿三日」に二重傍線] 雨、風、行程二里、小倉市、三角屋(三〇・中)

わざと風雨の中を歩いた、先日来とかく安易になつた気持を払拭しようといふ殊勝な心がけからである。
小倉まで来て、放送居士、ではない、放送局下の惣三居士を訪ねる、初相見にしては始中終見、よばれて、しやべつて、いたゞいて、それから。――
酔うた、酔うた、ヱロ街散歩、何とぬかるみの変態的興味、シキシマを一本づゝ彼女達に供養した。
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 びつしよりぬれてゆくところがない
・風の建物の入口が見つからない
 どうやら霽れてくれさうな草の花
 春雨の放送塔が高い
・移りきて無花果も芽ぶいてきた(惣三居)
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廃棄工場(発電所)、そこにはデカダン的で男性的なものがあつた、なか/\句にならない。
寝十方花庵、月
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