たうに有難いことだ)。
二月三日[#「二月三日」に二重傍線] 曇、よく眠られた朝の快さ。
生きるも死ぬるも仏の心、ゆくもかへるも仏の心。
不思議な暖かさである、『寒の春』といふ造語が必要だ、気味の悪い暖かさでもある。
[#ここから2字下げ]
・こゝに住みなれてヒビアカギレ
・つゝましう存らへてあたゝかい飯
・豆腐屋の笛で夕餉にする
日の落ちる方へ尿してゐる
[#ここで字下げ終わり]
馬酔木居を訪ねてビールの御馳走になる、私は至るところで、そしてあらゆる人から恵まれてゐる、それがうれしくもあればさびしくもある。
子供はお宝、オタカラ/\というてあやしてゐる。
二月四日[#「二月四日」に二重傍線] 雨、節分、寒明け。
ひとりで、しづかで、きらくで。
[#ここから2字下げ]
・ひとりはなれてぬかるみをふむ
[#ここで字下げ終わり]
二月五日[#「二月五日」に二重傍線] まだ降つてゐる、春雨のやうな、また五月雨のやうな。
毎日、うれしい手紙がくる。
雨風の一人、泥濘の一人、幸福の一人、寂静の一人だつた。
[#ここから2字下げ]
・雨のおみくじも凶か
凩、書きつゞけてゐる
前へ
次へ
全35ページ中34ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
種田 山頭火 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング