いた、日本水仙は全く日本的な草花だと思ふ、花も葉も匂ひも、すべてが単純で清楚で気品が高い、しとやかさ、したしさ、そしてうるはしさを持つてゐる、私の最も好きな草花の一つである。
やうやく平静をとりもどした、誰も来ない一人の一日だつた。
米と塩[#「米と塩」に傍点]――それだけ与へられたら十分だ、水だけは飲まうと思へば、いつだつて飲めるのだが。
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しぐれ、どこかで三味を弾いてる
水兵さんがならんでくる葉ぼたん畑
今年のお正月もお隣りのラヂオ
ひそかに蓄音機かけてしぐれる
けふも返事が来ないしぐれもやう
・ひとり住んで捨てる物なし
二階ずまゐのやすけさのお粥が出来た
お正月もすんで葉ぼたんの雨となつて
さん/″\降りつめられてひとり
ぬかるみふみゆくゆくところがない
・重いもの負うて夜道を戻つて来た
・戻れば水仙咲ききつてゐる
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今夜は途上でうれしい事があつた、Sのところから、明日の句会のために、火鉢を提げて帰る途中だつた、重いもの、どしや降り、道の凹凸に足を踏みすべらして、鼻緒が切れて困つてゐると、そこの家から、すぐと老人が糸
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