ねないのだらう!
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 晴れた朝の悲しいたよりだつた(寸鶏頭君の病篤し)
・酔へば人がなつかしうなつて出てゆく
 師走夕暮、広告人形がうごく
 久しぶりに話してゐる雨となつた
 どしやぶり、正月の餅もらうてもどる
・どうなるものかとはだしであるく
 暮れてまだ搗いて餅のおいしからう
 濡れて戻つて机の塵
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Sがお正月餅を一袋くれた、※[#「飮のへん+稻のつくり」、第4水準2−92−68]餅、平餅、粟餅、どれもこれもありがたくいたゞいた、元坊のところでも搗きたてのホヤ/\餅をおいしく食べた。……
寝床の中でつく/″\考へる、――私は幸福な不幸人だ[#「幸福な不幸人だ」に傍点]、恵まれた邪宗徒[#「恵まれた邪宗徒」に傍点]だ、私はいつでも死ねる、もがかずに、従容として! 私にはもうアルコールもいらない、カルモチンもいらない、ゲルトもいらない、フラウもいらない、……やつぱりウソはウソだけれど、気分は気分だ。

 十二月廿九日[#「十二月廿九日」に二重傍線] 晴、紺屋町から春日駅へ、小春日和の温かさ。

或る人へのたよりに、『……こゝへ移つて来てから
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