にならなければならない、口で嘘をいはない事は出来ないこともあるまいが、体《カラダ》でも嘘をいはないやうにしなければならない、行持が水の流れるやうに、また風の吹くやうにならなければならないのである。
行乞しつゝ腹を立てるやうなことがあつては所詮救はれない、断られた時は、或は黙過された時は自分自身を省みよ、自分は大体供養を受ける資格を持つてゐないではないか、応供は羅漢果を得てゐるものにして初めてその資格を与へられるのである、私は近来しみ/″\物貰ひとも托鉢とも何とも要領を得ない現在の境涯を恥ぢ且つ悲しんでゐる。
そして物を無駄にしない事は一通りはやれないことはない、しかししんじつ物を無駄にしない事、いひかへれば物を活かして使ふことは難中の難だ、酒を飲むのも好きでやめられないなら仕方ないが、さて飲んだ酒がどれだけの功徳(その人にとつては)を発揮するか、酒に飲まれて酒の奴隷となるのでは助からない。……
今日は菊の節句である、家を持たない私には節句も正月もないが、雨のおかげでゆつくり休んだ。
降る雨は、人間が祈らうが祈るまいが、降るだけは降る、その事はよく知つてゐて、しかも、空を見上げて霽れてく
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