けふのべんたうも草のうへにて
波の音しぐれて暗し
食べてゐるおべんたうもしぐれて
朝寒夜寒物みななつかし
しぐるゝやみんな濡れてゐる
さんざしぐれの山越えてまた山
[#ここで字下げ終わり]
ずゐぶん降つた、どしや降りだ、雷鳴さへ加はつて電燈も消えてしまつた、幸にして同宿の老遍路さんが好人物だつたので、いろ/\の事を話しつゞけた、同行の話といふものは(或る意味に於て)面白い。
夜長ゆう/\として煙管をみがく――といふやうなものが出来た、これは句でもない、句でないこともない、事実としては、同行の煙管掃除の金棒を借りて煙管掃除をしたのである。
十月廿九日[#「十月廿九日」に二重傍線] 晴、行程二里、富高、門川行乞、坂本屋(三〇・中上)
降つて降つて降つたあとの秋晴だ、午前中富高町行乞、それから門川まで二里弱、行乞一時間。
けふの行乞相もよかつた、しかし一二点はよくなかつた、それは私が悪いといふよりも人間そのものの悪さだらう! 四時近くなつたので此宿に泊る、こゝにはお新婆さんの宿といつて名代の宿があるのだが、わざと此宿に泊つたのである、思つたよりもよい宿だ、いわしのさしみはうま
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