さう/\として聞えるのもよい。
米の安さ、野菜の安さはどうだ、米一升十八銭では敷島一個ぢやないか、見事な大根一本が五厘にも値しない、菜葉一把が一厘か二厘だ、私なども困るが――修業者はとてもやつてゆけまい――農村のみじめさは見てゐられない。
行乞相はよかつたりわるかつたり、恥づかしいけれどそれが実相が[#「が」に「マヽ」の注記]仕方がない、持寂定ならばそれは聖境だ、私は右したり左したり、上つたり下つたり、倒れたり起きたり、いつも流転顛動だ。
たま/\鏡を見る、――何といふ醜い黒い顔だらう、この顔を是認するほど私の心地はまだ開けてゐない、可憐々々。
途上、店頭で柚子を見つけて一つ買つた、一銭也、宿で味噌を分けて貰つて柚子味噌にする、代二銭也。
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・まつたく雲がない笠をぬぎ
 よいお天気の草鞋がかろい
 警察署の芙蓉二つ三つ咲いて
・秋空、一点の飛行機をゑがく
・見あぐればまうへ飛行機の空
・けふのべんとうは橋の下にて
 旅の法衣で蠅めがつるむ
 刈田の青草ぐい/\伸びろ
・大石小石かれ/″\の水となり
 もぎのこされた柿の実のいよ/\赤く
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