か飲めなくて死にそこなつた、とんだ生恥を晒したことだ!)。
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   呪うべき句を三つ四つ
 蝉しぐれ死に場所をさがしてゐるのか
・青葉に寝ころぶや死を感じつゝ
 毒薬をふところにして天の川
・しづけさは死ぬるばかりの水が流れて
[#ここで字下げ終わり]
熊本を出発するとき、これまでの日記や手記はすべて焼き捨てゝしまつたが、記憶に残つた句を整理した、即ち、
[#ここから2字下げ]
・けふのみちのたんぽゝ咲いた
・嵐の中の墓がある
 炭坑街大きな雪が降りだした
    □
・朝は涼しい草鞋踏みしめて
 炎天の熊本よさらば
・蓑虫も涼しい風に吹かれをり
 熊が手をあげてゐる藷の一切れだ(動物園)
・あの雲がおとした雨か濡れてゐる
・さうろうとして水をさがすや蜩に
・岩かげまさしく水が湧いてゐる
・こゝで泊らうつく/\ぼうし
・寝ころべば露草だつた
・ゆふべひそけくラヂオが物を思はせる
・炎天の下を何処へ行く
・壁をまともに何考へてゐた
・大地したしう投げだして手を足を
・雲かげふかい水底の顔をのぞく
・旅のいくにち赤い尿して
・さゝげまつる鉄鉢の日ざかり
[#ここで字下
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