また一つ旅のヱピソード、――この宿は子沢山で、ちよつと借りて穿くやうな下駄なんぞありやしない、やうやく自分で床下からチグハグなのを片足づゝ探し出したが、右は黒緒の焼杉、左は白緒の樫、それも歩いてゐるうちに、鼻緒も横も切れてしまつて、とう/\跣足にならなければならなかつた。
大淀の丘に登つて宮崎平原を見おろす、ずゐぶん広い、日向の丘から丘へ、水音を踏みながら歩いてゆく気分は何ともいへないものがあつた、もつともそれは五六年前の記憶だが。
昨日、篤信らしい老人の家に呼び入れて[#「れて」に「マヽ」の注記]、彼岸団子をいたゞいたこと、小豆ぬり、黄粉ぬり、たいへんおいしかつたことを書き漏らしてゐた、かういふ場合には一句なければならないところだ。
これは闘牛児さんの話である、氏の宅の井戸水はおつとりとした味を持つてゐる、以前は近隣から貰ひにくるほどの水だつたさうなが、厳父がヨリよい水を求めて掘り下げて却つてよくない水としたさうな、そしてまたそれを砂利で浅くして、やうやくこれだけの水が出るやうになつたとのことである、このあたりは水脉が浅いらしい、とにかく、掘りさげて水が悪くなつたといふ事実は或る暗
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