、私が家の前に立つと、奥へとんでいつて一銭持つてきてくれた、そして私に先立つて歩いて家々のおくさんを探し出しては一銭を貰つてきてくれた、附添の女中も何ともすることが出来ない、私はありがたいやら、おかしいやらで、微苦笑しつゝ行乞をつゞけた。
草鞋の時代錯誤的価値、――草鞋を探し求める時にはいつもこんな事を考へる、けふも同様だつた。
此宿でも都城でも小林でも晩飯にきつとお汁を添へる、山家、或は田舎ではさういふやり方らしい(朝は無論どこでも味噌汁だ)。

 九月廿六日[#「九月廿六日」に二重傍線] 晴、宿は同前。

九時から三時まで、本通りの橘通を片側づゝ行乞する、一里に近い長さの街である、途中闘牛児さんを訪ねてうまい水を飲ませて貰ふ。
宮崎は不景気で詰らないと誰もがいつてゐたが、私自身の場合は悪くなかつた、むしろよい方だつた。
夜はまた招かれて、闘牛児さんのお宅で句会、飲み食ふ会であつた、紅足馬、闘牛児、蜀羊星(今は故人)みんな家畜に縁のある雅号である、牛飲馬食ですなどゝいつて笑ひ合つた。
昨日はあれほど仲のよかつた隣室の若夫婦が、今日は喧嘩して奴[#「奴」に「マヽ」の注記]鳴つたり殴つた
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