] 雨、曇、同前。

八時から二時まで都城の中心地を行乞、こゝは市街地としてはなか/\よく報謝して下さるところである。
今日の行乞相はよかつた、近来にない朗らかさである、この調子で向上してゆきたい。
一杯二杯三杯飲んだ(断つておくが藷焼酎だ)、いゝ気持になつて一切合切無念無想。
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   きのふけふのぐうたら句
 糸瓜の門に立つた今日は(子規忌)
・旅の宿の胡椒のからいこと
・羽毛《ハネ》むしる鶏《トリ》はまだ生きてゐるのに
・しんじつ秋空の雲はあそぶ
 あかつきの高千穂は雲かげもなくて
 お信心のお茶のあつさをよばれる
 芋虫あつい道をよこぎる
 竹籔の奥にて牛が啼いてるよ
・露でびつしより汗でびつしより
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夜は教会まで出かけて、本間俊平氏の講演を聴く喜びにあつたが、しかし幻滅でないとはいへなかつた、予期したよりも世間並過ぎ上手過ぎてゐはしないだらうか、私は失礼とは思つたが中座した。
やつぱり飲み過ぎた、そして饒舌り過ぎた、どうして酒のうまさと沈黙の尊さと、そして孤独のよろしさとに徹しえないのだ。
同宿の坊さんはなか/\の物知りである、世間
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