事がある!
九月廿二日[#「九月廿二日」に二重傍線] 晴、曇、都城市、江夏屋(四〇・中)
七時出立、谷頭まで三里、道すがらの風光をたのしみながら歩く、二時間行乞、例の石豆腐を食べる、庄内町まで一里、また三時間行乞、すつかりくたぶれたけれど、都城留置の手紙が早くみたいので、むりにそこまで二里、暮れて宿についた、そしてすぐまた郵便局へ、――友人はありがたいとしみ/″\思つた。
けふはぞんぶんに水を飲んだ、庄内町の自動車乗場の押揚ポンプの水はよかつた、口づけて飲む山の水には及ばないけれど。
こゝへ来るまでの道で逢つた学校子供はみんなはだしだつた、うれしかつた、ありがたかつた。
けふもまた旅のヱピソードの特種一つ、――宿をさがして急いでゐるうちにゆきあつた若い女の群、その一人が『あう』といふ、熊本のカフヱーでみたことのある顔だ、よく覚えてゐましたね、いらつしやいといひましたね、さてあなたはどこでしたかね。
同宿十余人、同室一人、隣室二人、それ/″\に特徴がある、虚無僧さんはよい、ブラ/\さんもわるくない、坊さんもわるくない、少々うるさいけれど。
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