く(緑平居)
・けふも暮れてゆく音につゝまれる
 あんなにちかいひゞきをきいてゐる(苦味生君に)
[#ここで字下げ終わり]
糸田風景のよいところが、だん/\解つてきた、今度で緑平居訪問は四回であるが、昨日と今日とで、今まで知らなかつたよいところを見つけた、といふよりも味はつたと思ふ。

 十一月廿八日[#「十一月廿八日」に二重傍線] 晴、近郊探勝、行程三里、香春町(二五・中)

昨日もうらゝかな日和であつたが、今日はもつとほがらかなお天気である、歩いてゐて、しみ/″\歩くことの幸福を感じさせられた、明夜は句会、それまで近郊を歩くつもりで、八時緑平居を出る、どうも近来、停滞し勝ちで、あんまり安易に狎れたやうである、一日歩かなければ一日の堕落だ、などゝ考へながら河に沿うて伊田の方へのぼる、とても行乞なんか出来るものぢやない(緑平さんが、ちやんとドヤ銭とキス代とを下さつた、下さつたといへば星城子さんからも草鞋銭をいたゞいた)、このあたりの眺望は好きだ、山も水も草もよい、平凡で、そして何ともいへないものを蔵してゐる、朝霧にほんのりと浮びあがる香春、一ノ岳二ノ岳三ノ岳の姿にもひきつけられた、ボタ
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