歳の峠から』とでも名付くべきでしたろう。若い人は大胆に若い恋を歌いたまえ。私ら中年者は中年の恋を露骨に歌います。それにしてももう少し物足りませんね。老爺《おじい》さんと……そして……フェヤセックスがいないから!
△私は以前から小っぽけな純文芸雑誌発刊の希望を胸ふかく抱いています。機が熟したら、必ず実行します。そして、その一半を俳句の椋鳥会と短歌の白楊社とに捧げたいと思うています。郷土芸術[#「郷土芸術」に白三角傍点]――新しい土に芽生えつつある新らしい草の匂いが、春風のように私の心をそそります。そして私の血は春の潮のように沸き立って来ます。(併し、こんなことはあまり高い声では申されません。地方雑誌の経営ではこれまで、度々失敗していますから。)
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       △ △ △
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△春が来た。春が来たからといって、私には間投詞を並べて、可愛い溜息を洩らすほどの若々しさもなく、また、暗い穴の底へ投《ほう》り込まれたような鬱憂もないが、矛盾した自己を、やや離れた態度で、冷かに観照しうるだけの皮肉がある。シニカルな気分である。この心
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