ちの喜ぶ千代紙やブローチや手提などを、まばゆくきらびやかに照らし出す夜店のアセチレン灯の光が、わずか半年ほど見なかつただけの初世の姿を、人ちがいかと思わせるほど美しく大人ツぽく見せた。
夜店の人混みの前で、行きちがつたこの男女の二組は、間もなくまた出会つた。行きちがつて、今度はもう会わないだろうと思つていると、またもや出会つた。お神楽の前の人混みで手品や漫才の櫓の下の人群のなかで、また夜店の前で、この二組は不思議に何度も行き会つた。その度に、娘たちが殊更に狼狽の様子を見せたり、誘いかけるように振り返つたりすることで、佐太郎はその娘たちのなかでいちばん姉さん株で引卒者という立場の初世が、わざと出会うように仕組んでいるのではないかと疑いはじめた。実際はその逆で、多少不良性のある秀治が、その一流の小狡さで誰にも気ずかれないようにたくみにみんなを引ツぱり廻しているのだつたが、佐太郎はそのときには気がつかずにいた。
夜店の前で四度目に出会つたとき、秀治たちは露骨に娘たちをからかいはじめた。娘たちはキヤツ/\と嬌声を上げながら、暗闇の方に逃げ出したが、その癖遠くへは行かず、いよ/\秀治たちを強
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