草道
田山録弥
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あわ[#「あわ」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
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一
「とてもあんなところには泊れやしないね、あんなところに泊らうもんなら何をされるかわかりやしない」かうBが言つたのは、その深い草道を半里ほどこつちに来てからであつた。かれ等は伴れて来た支那人の案内者をまぜて五人、今夜はその山の寺に泊るつもりでやつて行つたのであつたけれども、そのあたりの光景のわるく無気味なのと、そこらに馬賊が出没していつそれが襲つて来ないともかぎらないといふのに不安になつて、もう午後四時過ぎの日影が山の端に低くなつてゐるのにも拘はらず、あわ[#「あわ」に傍点]てゝそこから飛び出して来たのであつた。彼等は草やしの[#「しの」に傍点]やかや[#「かや」に傍点]の一面に茂つてゐる谷合の路――路といつてもどうかすればすぐ見失つてしまひさうな細い路を走るやうにして一生懸命にわけて行つた。
「馬賊ツて、別にやつて来るんぢやな
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