時子
田山録弥
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)室《へや》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#始め二重括弧、1−2−54]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
Bはやつとひとりになつた。時計を見ると、もう十時である。ホテルの室《へや》の中には、いろ/\なものが散《ちら》ばつて、かなりに明るい電気が卓《テーブル》の上に、椅子の上に、またその向うにある白いベツトの上に一杯にその光線を漲《みなぎ》らしてゐる。今まで間断《ひつきり》なしに客が出入《ではひり》して、低い声音《せいおん》だの、高い哄笑だの、面白さうな笑声《せうせい》などがその一室に巴渦《ともゑうづ》を巻いてゐたが――疲れ果てたやうな、早くさういふ人達から自由になりたいといふやうな、やゝ蒼白いBの顔がくつきりとその明るい光線の中に浮び出して居たが、本社からつけられた随員であ
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