犬
田山録弥
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)傍《そば》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|夜《や》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
「馬鹿に鳴くね。大きな犬らしいね」Bを見送りに来たMが言ふと、すぐ傍《そば》の籐椅子に腰をかけてゐたT氏は、
「H領事の犬だらう? 先生方も今日立つ筈だからね」
その犬の悲鳴する声は、甲板の下のハツチのあたりから絶えずきこえて来た。小さな箱の中に入れられて、鉄の棒の間から鼻を出したり口を出したりして、頻りに心細がつて鳴いてゐるのであつた。
「Hさん、何処に行くんですか?」
Mが訊いた。
「赤峰《せきはう》にやられてね」
「赤峰――それは大変ですね? それで奥さんも一緒ですか?」
「さうだよ」
「それは大変だ――」
「でもな、
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