食ってうまいものに合鴨《あいがも》、あひるがある。合鴨の青首はあひると同じ格好で区別がつかぬ。しかし煮てみると前歯で皮がプツプツと切れるのが合鴨、切れないでいつまでもしねしねしているのはあひる。
*水鶏《くいな》は冬より夏の方がうまい。鴨も夏池に残っているものはうまいだろう。
*あひるは昔は夏食べるものときまっていたものだった。
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       牛肉屋のすきやき

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*東京の牛肉屋のタレは悪い。出来合いのタレの中に三割くらいの酒と、甘いから生《き》じょうゆ一割くらい加えること。
*ロースやヒレを食う時は肉の両面を焼くべからず。必ず片面を焼き、半熟の表面が桃色の肉の色をしているまま食べること。
*豆腐、ねぎ、こんにゃくなど、いっしょにゴッタ煮する書生食いの場合は別。
*ロース、ヒレはタレをよくつけて鍋で焼く。汁の中に肉を入れるのではない。
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       蔬菜《そさい》

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*極力新鮮を採れ、畑からじか[#「じか」に傍点]が一等。たけのこ、まつたけな
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