。これすなわち、食器の衰えは、料理界の衰えの影響であるといい得られるのである。
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新鮮に勝る美味なし。
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自然の栄養価値、栄養の集成が味の素である。
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低級な人は低級な味を好み、低級な料理と交わって安堵《あんど》し、また低級な料理をつくる。
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京都は、昔から料理がもっともよく発達していた。ここには長く皇居があった。しかも、四周《ししゅう》山々に囲まれて、料理の料理とすべき海産の新鮮なさかながなかった。ここに与えられた材料は、豆腐、湯葉《ゆば》、ぜんまいなどであった。この一見まずい材料をもってして、貴族、名門の口を潤《うるお》すべき料理を考案しなければならなかった。こうした材料、こうした土地柄が、立派な料理の花を咲かせたのは理の当然といえよう。
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まぐろはいつ頃、どこで獲《と》れたのが美味いとか、たいはどうして食べるべきであるとかいうようなことを知っているのが、いかにも料理の通人《つうじん》のごとく思われている。
だが料理はそんなものではない。ほんとうに美味いものを食べたいと思う食通は、まず飯《めし》を吟味《ぎんみ》
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