生活、特等生活と、運命的に与えられている生活がある。またそれに従って作るところの料理がさまざまである。
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 貧乏国になった日本料理、それが生んだ料理研究家の料理、毎日ラジオ、テレビで発表されている料理。これが貧乏国日本の生んだ料理研究であり、栄養料理の考えである。
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 一顰一笑《いっぴんいっしょう》によって愛嬌《あいきょう》をまき、米を得んとする料理研究家がテレビに現われて、一途《いちず》に料理を低下させ、無駄《むだ》な浪費を自慢して、低級に生きぬかんとする風潮がつのりつつある。
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 もともと日本料理の中で生まれたわけではないから、現今《げんこん》のごとく低級の谷へ谷へと下降しつつある。このあり様《さま》は見るに忍びない。内容の重きに注意せざる者は、勢い外表のデザインのみに走る。
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 要求する食物に不味《まず》いものなしだから腹が空《へ》るにかぎる。
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 うかうかと元味を破壊して、現代人は美味《うま》いものを食いそこなっている。
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 手をかけなくても栄養も摂《と》れ、美味でもあり、見た目も美しいものを、いたずらに子
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