とれるようにするのが第一義で、料理は第二義。ここに堕落《だらく》がある。しかし、仕方のないことである。だから、われわれは玄人《くろうと》の料理だからといって、金出して食う料理は、美味《うま》いものとするのが誤り。そして、それが家庭の料理をも滅亡に導いてしまったのである。
*
家庭の料理、実質料理、一元料理、そこにはなんらの思惑《おもわく》がはさまれていない。ありのままの料理。それは素人《しろうと》の料理であるけれども、一家の和楽、団欒《だんらん》がそれにかかわっているのだとすれば、精一杯の、まごころ料理になるのである。味噌汁《みそしる》であろうと、漬けものであろうと、なにもかもが美味い。それを今日の簡単主義と、ものぐさ主義が、商業料理へ追いやってしまって、家庭の料理は破滅に陥ったのである。
底本:「魯山人の食卓」グルメ文庫、角川春樹事務所
2004(平成16)年10月18日第1刷発行
2008(平成20)年4月18日第5刷発行
底本の親本:「魯山人著作集」五月書房
1993(平成5)年発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2010年1月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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