、茶は濃くなり、ざあっと一気にお湯を注げば、茶は薄くなる。熱湯の注ぎ方によって、濃淡自在にお茶は加減できる。
お茶漬《ちゃづ》けには、熱湯を少しずつ注いだ濃い目のものを用いるのがよい。しかし、抹茶《まっちゃ》や煎茶《せんちゃ》にしても、最上のものを用いることが秘訣《ひけつ》だ。茶が悪いと、茶漬けの中に、なにが入っていようが駄目《だめ》である。
要するに、茶がよくなければ茶漬けの意義がない。
茶漬けのまぐろ
さて、茶漬けに用いるまぐろだが、しびまぐろ[#「しびまぐろ」に傍点]がいい。
しびまぐろは、ふつうすし屋で使っているまぐろのことである。まぐろのトロといって、白っぽい、脂《あぶら》っ濃《こ》いところをよろこぶ。脂っ濃いところは、男の四十歳以前の好みである。四十歳以後になると、だんだん脂っ濃いものから嗜好《しこう》が遠ざかる。
茶漬けに用いるまぐろの材料も、トロ、中トロ、赤身、好みによって選択すればいいわけである。
脂の少ない赤身は赤身で美味《うま》いし、脂の多いところはまたトロで美味い。まぐろの質さえ吟味《ぎんみ》すれば、各人の好みに任せて、材料をととのえるべきである。
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