現在生け花の先生をしているひとびとのあり様を見ると、これがまことにもって料理人に対していったことが、そっくりそのままに当てはめられる。その風采といい、その言葉遣いといい、誠に恐縮せざるを得ないものがある。そこでその花に対する彼女等の賞玩《しょうがん》態度も推して明らかである。花そのものの美は分っても、花の持つ自然の趣は分らない。本当に花が分ればこれをどんなものに生けるか、花を盛る器についても、相当の見識が出て来るのは当然のことであるが、あたら花をけがすような器が使われたり、さらにはなはだしきは花を眺めるのか、器を眺めるのか、どっちか分らないような、花をそっちのけにした器を平気で用いていたりする。生け花の先生には自然の趣などということは、なんの縁も関わりもないものであるらしい。



底本:「魯山人の美食手帖」グルメ文庫、角川春樹事務所
   2008(平成20)年4月18日第1刷発行
底本の親本:「魯山人著作集」五月書房
   1993(平成5)年発行
初出:「星岡」
   1935(昭和10)年
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2009年12月4日作成
青空文庫作成フ
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