世界の「料理王逝く」ということから
北大路魯山人
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)醍醐味《だいごみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)精々|栖鳳《せいほう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)へなちょこ[#「へなちょこ」に傍点]
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「世界の食通から『料理の王』と賛美されたフランス随一の板前オウグュスト・エスコフィエ老がこのほど亡くなった。
翁は外国にあって――わけても英・独・米等の地に永く留まって、フランス料理の醍醐味《だいごみ》を遍《あまね》からしめたので、『美食の大使』とも呼ばれていた。
ロンドンのサボイ・ホテルやカルトンで腕を揮《ふる》っていた頃には、どれほどの喰《く》いしん坊がはるばる海を渡って彼の皿を求めに来たか知れない。
大戦前、しばらくの間独帝に仕えた折りのこと、朕を毒殺するも容易であろうといったカイゼルに対して、フランス人は不意討ちなどは仕《つかまつ》りませぬと敢然といい放ったものだという。
その死に遇《あ》って、パリのあらゆる新聞が筆を揃えて、偉大なる損失を悼んだのも、また、
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