先に政府が勲章をもって功績に報いたのも、調理を芸術の一分野と看《み》る、いかにも美食国らしい振舞いではないか」
 右は「料理王逝く」として去る四月二十八日の東朝所載の記事。いかにもその料理王なるひとの生涯は思い見てうらやましきことだ。

       すべての日本は外国に優る

 その料理王の料理、いうがごとくしてそれが日本人であるなら、僕らのごときは毎日のように彼の料理を食ったことか分らない。
 昔から僕らは日本という国、およそ何事も精神的のことであるかぎり、いかなる外国にも劣ることなしと考えているが、料理人ばかりは、この話に価するような者は一人もいないようだ。

       日本料理と西洋料理との根本相違

 もっとも日本料理と西洋料理とは、根本的に行方が違うようである。西洋料理はだいたいにおいて拙い材料を煮様、焼き方によって美味くする。従って、発達した理知がもっとも必要だ。しかし、目はいらない。それというのは西洋料理は美術的でないから。西洋料理では物の色は大きな役目をしているといえない。従って、目を喜ばす色を持つ料理はないといってよい。だから、食器類が美術的によき発達をしていな
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