残肴の処理
北大路魯山人
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)億劫《おっくう》
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星岡時代、残肴を見て感あり、料理人一同に留意を促すゆえんを述べたことがある。
料理を出して、お客のところから残ってきたものを、他ではどんなふうに始末しているかわたしは知らない。わたしならその残肴を、お客がぜんぜん手をつけなかったもの、つけてもまだたくさん残っているもの、刺身は刺身、焼き魚は焼き魚というふうに整理して区分けし、これを生かすことを考える。こういうことは以前からしばしばみんなに話はしたものの、億劫《おっくう》がって実現されたためしがなかった。
昔の料理人というのは、安っぽい人間が実に多くて、残肴の処理などといえば、いかにもケチな話のように聞き、真剣には耳を貸さないようであった。
米一粒でさえ用を全《まっと》うしないで、捨て去ってしまうのはもったいない。雀《すずめ》にやるとか、魚にやるとか、糊《のり》をこしらえるとか、工夫するのも料理人の心がくべきことだと思う。
そんなことをいうのは、人間が古いと感ずるらしい。一椀の飯でも意味なく捨て去ってしまうことは許
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